トラが来たときのこと
トラが我が家にやってきたのは、本当に突然のことでした。
もともと大の猫好きで、猫を飼いたくて仕方がなかったのですが、同居していたお姑さんが動物を飼うのが好きでなく、仕方なく諦めて26年間ほど我慢をしていたのです。
けれど、そのお姑さんが認知症になり、身体機能の衰えが著しくなり施設に入られました。そしてそのたった2週間後に、娘が友達の家から茶トラの猫をもらって、真夜中に連れて帰ってきたのです。生後約6ヶ月の子猫、といっても体はけっこう大きくなっていましたが。
その夜は娘が抱いて寝ようとしましたが、友達の家の動物たちの毛やらハウスダストにやられて、両目のまぶたが異様に腫れてしまったのです。もしや猫アレルギーかと危ぶまれたので、その夜は私がその猫を抱いて一緒に寝ました。
初めての場所に始めこそニャー、ニャーと鳴いていましたが、一緒に寝ると大人しくなり、いい子で一晩ぐっすり寝ました。
翌朝は抱っこして下に降り、夫にも見せようとしたのですが、廊下にいた夫を見るなり驚いて暴れ、階段をかけ上がってしまいました。
夫も突然の茶色い動物との遭遇にびっくりでしたが、あまり猫を好きでなかった夫も、茶トラなら許す、と言ってくれました。(意味がわからん。どんな猫でも可愛いのに。)
娘も眼科に行って診てもらいましたが、猫アレルギーではないということで一安心しました。
名前をどうしようということになって、私が開口一番、「寅次郎でいいんじゃない?」というと、男はつらいよシリーズの大好きな夫も賛成し、寅次郎に決まりました。でも、呼ぶ時はトラ、とかトラちゃん、と呼びます。全くフーテンの寅さんと同じです。
それ以来、トラは我が家のアイドルとなり、猫を嫌いだった夫が一番変わりました。次々と猫用におもちゃやおやつを買ってきたり、ネットでねこグッズを検索しては買ったりして、トラと遊ぶのが日課になりました。家族の会話はもっぱらトラのことです。前よりもみんなのおしゃべりが増えました。
今は、トラは4歳。5キロ以上もある大きな猫になりました。でも、変わらず可愛いくて面白くて、家族を癒してくれています。